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松井秀喜選手よ脱皮して下さい

201186

宇佐美 保

 

 松井秀喜選手に関して書こうとパソコンに向かいましたが、彼のヤンキースでの先輩である「伊良部秀輝氏」の訃報に接し、余りにお気の毒で、キーボードを打つ手が止まってしまいました。

伊良部氏は、松井秀喜選手とお名前が同じHIDEKIであり、且つ、松井秀喜選手に劣らない素質(“ノーラン・ライアンが彼を見た時、こんな逸材は見たことがないと話していた。まさに剛腕だった(注:1)”)を持ち、その上、研究熱心(注:2)でありながら、米国球界関係者は「BIG CHILD」(大きな子供)と痛烈批判されたり、故ジョージ・スタインブレナー(当時ヤンキースオーナー)からは「太ったヒキガエル」と酷評されたりと、十分な輝きを披露出来なかった伊良部氏がお気の毒で堪りません。

 

 松井秀喜選手(ヤンキース当時)も伊良部投手同様に、期待された程のホームランが打てなかった為、スタインブレナー氏から「こんなパワーのない選手を獲った覚えはない」と非難されました。

 しかし、伊良部投手と松井選手との境遇に大きな相違を私は感じるのです。

トーリ監督(当時)は、 “チャンスにも動ぜず打点を稼げ、出塁率も高い選手”として松井選手を信頼し支えてくれ、又、松井選手と誕生日が1週間違いの親友ジーター選手が身近にいて心強かった筈です。

 

そんな松井選手でも、エンジェルスを経て、アスレチックスへ移籍され、今シーズン当初は全くの不振で、試合にも出して貰えない状態に陥り、早晩、他球団へ放出か、日本球界へ復帰?或いは引退か?と誰しもが思って当然の状態でした。

 

 そんな折(6月の初め)、松井選手同様に、期待されつつ今シーズンからアスレチックスのユニフォームを着たケビン・クーズマノフ内野手は、不振とはいえ打率と本塁打で松井選手を上回る成績を残していながら、マイナーへ降格されました。

 

 早晩、松井選手もマイナー落ちか、放出か?と私は思いました。

何しろ、先の拙文≪松井秀喜選手MVPおめでとう、しかし……≫、≪記録のイチロー選手と捨石の松井選手≫等にも書きましたように、バッティング時の体の軸を、斜めにキャッチャー側に倒し、松井選手のホームラン・ボールを待ち受け、毎試合ライトスタンドに何人かのファンが陣取り、一人一人「一文字ずつ」掲げている、「Matsui Land」のプラカードめがけてバットを振っているように見えました。

 

その結果、体が早く開いてしまい、アウトコースのボールは、手打ち状態で、かつてヤンキース時代の尊称(?)“ゴロ・キング”で(相手チームから?)讃えられるのでは?と懸念しました。

特に、616日のホームランで、日米通算500号に王手をかけた時には、“これからは、もっと、ライトスタンドに意識が行き、酷い状態になり、放出される!”と私は心配しました。

 

 ところが、松井秀喜選手には伊良部秀輝選手と異なる人生が待ち受けていたのです。

 

何と69日、どちらかと松井選手に辛く当っているように(私には)見えたボブ・ゲレン監督が解任され、ボブ・メルビン氏が監督代行を務める事になったのです。

 

 そして、メルビン氏は“松井秀喜選手のファンである”との公言されておられるのです。

ですから、インター・リーグ(ナ・リーグチーム主催でDH制が実施されない場合)では今までは出番がなかった松井選手を、メルビン氏は(今では、通常の試合でも)レフトを守らせ殆ど毎試合起用しました。

 

 そのお陰と私は思うのですが、松井選手のヒット数は増えてきました。

そして、何と、6月16日以来、103打席かけた後、720には、500号ホームランを打つことが出来ました。

 

 これで暫くは、ライトスタンドへ向けての振り回しを止めてくれるのかと喜びましたが、何と、松井選手の談話は次のようでした。

「(500本塁打への意識は)本当になかった。こんなに(長く)かかるんだったら、もっと意識すればよかった。そうしたらもっと早く出たかも。早く打ってしまいたい、とすら考えなかった」

 

 私は、この松井選手の談話を、彼の本心から出た言葉とは信じられませんでした。

ホームランを狙っていたからこそ、早めに体がライトスタンドに向かってしまい、ゴロ・アウトを重ねていたのに!

 

そして、驚いたことには松井選手は好投手ハラデー(でしたかしら)以外のビデオを見ていないと野球解説のどなた方紹介してくれました。

(この投手への打率は良くないながらもホームランは打っているそうです)

多くの選手がビデオで盛んに研究している今の時代、何故、他の選手を研究、観察し、学ぶべき点を取り入れないのでしょうかをされないのでしょうか?

 

 ただ、不思議なことに、松井選手のスイング時のバットの軌道は水平なのです。

ですから、ホームランを意識しなければ、今のヒット量産体制は継続可能かも?

 

こう思っている私に、或るお方からご親切なメールを頂きました。

掲載を了解して下さいましたので、次にコピーさせて頂きます。

 

 

私は、松井秀喜氏と同じ石川県出身であることもあり、星陵時代から応援しているファンの1人です。

 宇佐美様の、松井選手についての書き込みを拝見しました。

松井選手のバッティングついての記事はとても納得がいくものでした。

実は松井選手も、榎本氏や王氏も学んだ合気道家の藤平光一師範の下で「不動の姿勢」とバッティングをチェックしてもらっていたそうです。

 

これは、現 運動科学研究所(当時、DS)所長の高岡英夫氏と交流のある、スポーツライター 松井浩氏と、広岡達朗氏の対談の記事(DS社発行の身体意識新聞)にも記載されていました。

広岡 ……ところが、巨人の松井みたいのは、(後ろになる)左足が軸だといって、もう重心が傾いている。反って打ってる。あんなのはナンセンスなんですよ。見ていて、バットを振っているなあと見えるのは理にかなっていない。リラックスした動作ちゅうのは、いつ振ったかわからんくらいなんですよ。実は松井という男も、藤平先生に会って不動の姿勢というのを何回も注意されている。それでもわかってないんです。
松井浩 松井選手も、確かに重心が下ではないですね
広岡 重心が下がっているつもりなんですよ。重心が左足にあったら、打ちにいってもアッパーにしか振れないですよ。どんなに動いても、(軸が)こう動く(平行移動)べきなんです。これがイチローなんです。不動の姿勢ができていれば、動いても力というのはいらないんです。それがイチローが天才的にできる。どうしてできるかは、わからないもんですね。そういう感性を持っているから、イチローは自然だと思っているんでしょ。・・・

(身体意識 平成11527日発行)

 

松井選手もメジャーに行く前に藤平師範の下で何度かチェックを受けてるが、反って打つ癖が直らなくて藤平師範にも怒られていた、あんなうち方はナンセンスというようなことをいっています。

 

また、藤平師範のファンである石井健次氏の「中村天風師が惚れた 心を最強にする道」という藤平師範についての著書にも、巨人軍に入ってそんなにたっていない頃の松井選手がほかの主力選手とともに 剣を重力に任すよう力まずに竹を切る指導を受けている風景等描かれています

 

広岡氏は、長島氏(選手時代に藤平師範に指導を受けているそうです)にも頼まれて当時の松井選手のチェックや指導をかって出たものを思われます。

ですので個人的な推測ですが、長島氏も松井選手の欠点等把握していたのではないでしょうか?

 

また、スポーツ雑誌(おそらくグラフィックナンバー)で松井選手と落合氏の対談か、どちらかの思い出話が紹介されていました。

その中で、松井選手が述べていたと記憶しているのですが落合氏には、左手の使い方を注意された。力む癖を直さないといけない等いわれたが、これも含めて僕なんです、というようなことが書かれていました。

 

7月から調子があがってきているので1ファンとしては喜ばしいことですがフォームを直す可能性は現状なさそうな気がしています。

また、おそらく世界の王氏であっても、彼はよほど王氏の指導・説明等に納得しない限りは変わらない可能性が高いと思います……

それでも松井選手が、宇佐美様や、広岡氏、松井浩氏の忠告等を受け止めてはやく変わってくれることを願います。突然の長文のメール、失礼いたしました。

 

 

 松井秀喜選手でも教わっても出来ないことがあるのだと知り、驚きました。

そして、尚驚いたのは、落合氏からもアドバイスを受けて居られながら、「これも含めて僕なんです」と答え、折角のアドバイスを拒絶してしまう態度に驚きました。

 

 何しろ、遅刻癖のある松井秀喜選手は、20047月、米大リーグのオールスター戦へ、最後のインターネット投票で「32番目の男」として出場の機会を与えられながらも、ア・リーグの試合前ミーティングに約5分の「遅刻」。

更には、2009年のワールドシリーズでも、試合前、交通渋滞に巻き込まれ、練習に遅刻。30分遅れでグラウンドに飛び出し、準備運動なしで打撃練習した。

 そして、アスレチックスに拾って貰った(?)今年ですら、遅刻をしています。

 

 こんな「遅刻癖」も「これも含めて僕なんです」では困ってしまいます。

松井選手は、常日頃、「チームの勝利を何より優先する」と語っていた筈です、チームを引っ張って行くべき彼が遅刻では、他の選手の士気を砕きかねません。

 

 松井選手が結婚された直ぐ後、“妻が「下げマン」と言われないように頑張る”旨の発言をされていました

余り松井選手らしくない品のない発言(DVD好きの松井選手らしい?)とは言え、今までの「僕」を捨て「新たな僕」へ邁進して頂きたいと思ったのですが、どうもそうではなかったようです

 

 先の500号ホームランの際の松井秀喜選手の談話の続きは次のようでした。

 

「(個人の)記録は見ている方が喜んでくれればいい」、本塁打についても「(他の安打に比べて)特別。最高の結果ですから。でもそれを目指して打席に立つことはない」。変わらぬ姿勢を貫いている。

 

 もういい加減に松井秀喜選手は「これも含めて僕なんです」を卒業して頂きたいものです。

見ている方が喜んでくれればいい」と松井選手が思われるなら、ホームランで「Matsui Land」とのプラカードを掲げ松井選手を応援しているライトスタンドのファンを喜ばせて頂きたいものです。

 しかし、「でもそれ(ホームラン)を目指して打席に立つことはない」と言われては、ライトスタンドのファンがお気の毒です。

 

 どうか、もう一度、「剣を重力に任すよう力まず、バットを振り下ろす」と言う「藤平師範」の教えに改めて挑戦して頂きたいものです。

(少なくとも新たな挑戦をすることで又新たな発見がある筈です)

 

もういい加減に松井選手は(ご自身お気付きかもしれませんが)「今の自分は僕だけが築いた」のではなく、多くの方のご支援の賜物と感じ入り、周囲の人の良い点を学びとる真摯な姿を見せて欲しいものです。

松井選手が心を入れ替えて「新しい僕」の発見に向かうよう願っています。

 

 若し、出来ないならばせめて「今の打撃フォーム(バットの水平移動)」や、「かつての好調時の打撃フォーム」のビデオをDVDに編集し保存し、再生して、常にご自分のフォームをチェックして頂きたいものです。

 

 

(注:1

 

 95年のロッテ時代に監督だったボビー・バレンタイン氏はAP通信に対し、「ワールドクラスの投手だった。ノーラン・ライアンが彼を見た時、こんな逸材は見たことがないと話していた。まさに剛腕だった」と伊良部さんの死を悼んだ。

 

(注:2

20110729

追悼。伊良部秀輝。あなたは永遠の野球少年だった

ピッチングメカニックの理論について語らせれば、おそらく日本で伊良部の右に出る人物はいないのではなかっただろう。打者に対して腕を隠していかにボールを速く見せるかを追求していた。

 

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